観光産業にとって2020年は永く記憶される年になりました。コロナ禍によりインバウンドは前年比99.7%減少し、GoToトラベルなど国内観光の支援事業も含めても、軒並み業績8〜9割減という状況だったのです。2019年には3188万人のインバウンドを迎え入れ。4.8兆円を売り上げていました。日本人国内旅行21.9兆円と合わせて市場規模は26.7兆円に上っていたのですが、2020年には日本人国内旅行10兆円、インバウンド0.7兆円の合計10.7兆円にまで縮小したのです。単純にみてコロナ禍による経済損失額は約16兆円に上ります。900万人の雇用を支える観光産業は苦境に立たされたまま回復の緒を見出せない状況です。2014年の1340万人(2.0兆円)から5年間で2.4倍にまで増加し、東京オリパラを開催する2020年度のインバウンド目標が、3000万人から4000万人に引き上げられたところでした。政府が掲げた2030年6000万人のインバウンド市場規模は15兆円になります。これに国内観光客市場24兆円を合わせ、観光業は約40兆円に及ぶ日本のリーディング産業になるはずだったのです
正に天国から地獄へ転落した感覚ですが、いたずらに不幸を嘆いたり、「これからどうなるのだろう?」と将来予測に終始するのではなく、観光産業の当事者として「今の状況を冷静に見極め、何の為に、どんな一手を打つべきか」を戦略的に考えるべきです。振り返ってみると、オーバーツーリズムという状況も散見され、長年にわたって先送りされて来た懸案事項、インバウンド・バブルによって覆い隠されてきた課題の解決機会と言えるのではないでしょうか。もちろん中長期的にはインバウンドの回復も見込まれますが、商業施設やオフィスなどと同様に、業務改革&体質改善を行なった上で、感染症と観光との共存の道を模索する必要があるのです。
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