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郊外への展開と課題 エリアクオリア指標の可能性と課題 ⑧

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2024年11月15日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年11月17日

【内容】

  1. 郊外都市への展開

  2. 郊外都市の様相

  3. ウォーカブルな街の希望

  4. 人流及び口コミデータの活用と課題

 

 

1.郊外都市への展開

ソフトな「街づくりのカルテ」づくりを目指すエリアクオリア指標ですが、エリマネ活動は郊外都市でも展開されるようになってきました。

これに伴い「郊外都市版」のエリアクオリアを検討する機会がありました。

都心版のエリアクオリア指標では、居住人口や就業人口の多さではなく、「ファンが多い街が良い街である」という広義の集客都市をまちづくりのゴールに設定し、指標を設計しました。

一方 郊外都市版では、「子育てしやすい」「安心・安全が大切」「健康に暮らしたい」など、日常生活に即した一層多様できめ細かなニーズが、重要視されることが分かりました。

沿線都市版における街づくりのゴール想定は、「暮らしの意味そのもの」を再定義することにつながると考えます。

 

2.郊外都市の様相

これまで日本の郊外都市(住宅地)では、通勤利便性が最重視されてきました。

毎日 都心に通勤することを前提にしたライフスタイルで、沿線都市では住む(=寝る、週末を過ごす)ことを中心に考えられてきたのです。

自宅から駅まで、駅から会社までのドアツードアでの通勤時間を、できるだけ短く負担少なく通勤できることが重要でした。

その上で、会社帰りに駅近くで効率よく食料品などの買い物もできる。

さらに、子どもたちが通う保育園或いは小中学校まで、放課後の塾を含めて、安全に通えるのかが重視されます。

また、子どもの急な発病にも対応できるかかりつけの病院が近所にあると安心です。

従来の「住みたい街」は、このように各世帯の収入を踏まえて、「会社までの通勤時間と住居費とのバランスを考え」、その上で「できる限り効率的な日常生活」を過ごせる郊外都市が選択される場合が多かったと言えるのではないでしょうか。

また日本の住宅は、日本住宅公団が1951年に提案した「標準設計51C型」をモデルにしてきました。

極小住宅を研究して作られたこの標準設計により、調理・洗濯からトイレや風呂を含む必要機能が、コンパクトに収められた一方で、応接・接客機能が後退し、鉄の扉一枚で住戸の内と外が遮断されてしまいます。

家族中心に自己完結したコンパクトな間取りは、住宅における日常生活の中から、他者との交流の場を外部に押し出してしまいました。

そして世帯収入と通勤時間とのバランスから選択された郊外都市でも、日常生活の利便性ばかりが重視されてきたのです。

「ワンオペ」という言葉がありますが、「人間一人分の世話」を、「一人だけ」で支えきれるものではありません。

よく言われるように、昔の家族であれば、親戚やご近所など両親以外の人たちが、子育てを手伝ってくれ支えてくれました。

そういった支え合いの社会構造を、家や街から排除してしまい、誰にも他人に頼ることなく、少人数の家族だけで子育てや介護などを負担し、生きづらさと閉塞感を感じ、病気や災害に対する不安を抱いているのが、沿線都市のライフスタイルの実情ではないでしょうか?

 

3.ウォーカブルな街

家の中に閉じこもるのではなく、近隣の人たちと交流していくことが、外出機会の増大につながり、結果的に「健康まちづくり」に繋がることはよく指摘されます。

そして、いつ起きるか分からない自然災害に対しても、何となく「不安」を抱えて暮らすのではなく、近隣共助で【何とかできる】と言う自信を得ることが、安心をもたらすのではないでしょうか。

いわゆる「歩いて楽しめる(ウォーカブルな)街づくり」は、健康だけではなく住民同士の「共助の促進」を通じて、「防災まちづくり」にもつながると考えられます。

同様に「子育て」についても、「近隣の人たちにも見守ってもらえる」「いざという時に相談に乗って貰える」という安心感があれば、負担軽減につながります。

結局「健康」や「防災」「子育て」そのものを街づくりの目的に掲げても、具体的にどのような行動変容を促せば良いのかわかりません。

それよりも「交流・回遊街づくり」と言い換えて、エリマネ活動を展開していく方が有効だと言えます。

「ウォーカブルな街づくり」を推進していくことが、結果的に「健康まちづくり」「防災まちづくり」「子育てまちづくり」につながるのだと考えられます。

エリアクオリア指標:郊外都市版では、このような考察をもとに、「ウォーカブルな環境」を計測しようと考えました。

 

4.人流及び口コミデータの活用と課題

これまでの認識を元に沿線都市版では、「交流・回遊街づくり」をゴールとして想定し、「日常圏内を回遊する人が多い街が、魅力ある街」と定義しました。

エリマネ活動を通じた、「回遊者数の増加」を可視化しようと試みますが、明確な結果が得られませんでした。

同様に「口コミデータ」でも、日常圏での交流・回遊者数につながる、日常生活に関する名詞に着目して共起語を計測することにしましたが、「コミュニティ関連ワード」に大きな変化を見出せませんでした。

母数の小さな郊外のエリマネ活動の効果を、人流データや口コミデータに反映させることの難しさを実感しました。

さらにきめ細かな変化を可視化できる、ビッグデータの活用を検討していきたいと考えます。

 
 
 

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