Ⅰ 街ぎわ環境の重要性 / Ⅱ 遊・文化をシンカさせる仕組み / Ⅲ MaaS時代の街ぎわ環境
Ⅰ 街ぎわ環境の重要性
東京大学・小泉秀樹氏の「都市をモデル化するとPlaceとLinkとで構成され、その組み合わせ方が都市計画と言える」という視点は以前述べました。[Place]とは家やオフィスなど様々な活動空間を指し、[Link] とはPlace 同士をつなぐ道などの連絡空間を指します。
Beyondコロナの都市の主な役割が「働・生産」から「遊・文化」に移行すると、遊・文化の舞台はビル内の閉じられた箱の中ではなく、このPlaceとLinkとの接点にあたる場所、建物低層部と道路とが接する沿道ゾーン:【街ぎわ環境】に仕込んでおく事が重要になると考えます。Place 内での多彩な活動がその中で完結してしまっては、Linkに染み出し発信・伝搬せず、他から Link を介して新しい情報・刺激が入ってくる事もありません。従って Place 内での活動がさらに変化・進化する可能性は低くなります。もちろんLink単独では活動の拠り所も無く進化しようがありません。次世代の都市の主要素となる遊・文化の進化・魅力化には Place とLink との相互作用・連鎖反応が不可欠なのです。以前ジャズクラブ・ブルーノート東京の代表を務めた伊藤陽介氏から「ブルーノートの店舗は地下や上層階でも良いが、そのエントランスは道路に面していなくてはダメ」と指摘されたことを記憶しています。【街ぎわ環境】は様々な人の活動接点となる場所で、米国ポートランドの都市局では「地上30ft(約10m)以下の世界観が非常に重要」をコメントされています。歩車混合の街づくりで先進モデルに挙げられるポートランド(北部のパール・ディストリクト)ですが、実は1970年代にも話題になったことがあります。現在はすっかり寂れてしまっていますが、当時注目されたのは同市の南部エリアでした。歩車分離が施され高層ビルの間に広がる公開空地には、ローレンス・ハルプリン設計のダイナミックな水景公園が繋がって人気を博していたのです。このポートランドの南・北モデルの変遷は教訓にすべきだと思います。日本の場合も総合設計制度などの導入で広い公開空地と引き換えにビルの高層化が奨励されてきましたが、その結果ビル風に煽られ人影もまばらで殺風景な公開空地が点在する事が少なくありません。この潮流の後追いをしない為にも、今こそ【街ぎわ環境】での工夫が不可欠なのです。
・以下の【Ⅱ 遊・文化をシンカさせる仕組み / Ⅲ MaaS時代の街ぎわ環境】についてはnoteを購入いただけますと幸いです。
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