【内容】
都市の定義
都市化する世界
新興メガシティの特徴
1.都市の定義
私たちが普段暮らしている「都市」について、「建築学用語辞典」では、下記のように定義されています。
「地域の社会的・経済的・政治的な中心となり、第二次・第三次産業を基盤として成立した人口・施設の集中地域。」
また、横国大准教授の野原先生は、「都・市」の二文字の意味から説明してくれました。
都「みやこ:宮城」政治・行政の中心地。
市「いち:市場」経済・交易、文化の中心地。
一般的に都市が生まれた主な要因として説明されるのが、「農耕のおける共同作業」です。
移動型で不安定な狩猟採集生活から、農耕技術の闊達によって、安定して食料が得られるようになり、定住して共同作業をするようになります。
さらに余剰食料が生まれると、それを交換する経済が生まれ、富を蓄える非農業従事者が生まれます。
この非農業従事者たちが集まる場所、物々交換の場すなわち「市場」が都市の原型だと言えます。
さらに非農業従事者の中でも貧富の差と権力とが生まれ、この権力に継続性を持たせるために、政治の中心を象徴化した「宮城」が生まれます。
こうして考えると都市には、「市場」としての「合理性」と、「宮城」としての「象徴性」との「2面性」が求められるのではないでしょうか。
2.都市化する世界
20世紀後半は、世界人口が急激に増加した時代です。
1802年に10億人だった人口は、1927年に20億人、1960年に30億人、1974年に40億人、1987年に50億人、1998年に60億人になり、2011年に80億人と、人口増加ペースが早まっています。
さらに世界人口に占める都市人口の割合は、1950年代には30%足らずでしたが、
現在その割合は50%に上昇し、2030年には60%(約49億人)が都市で暮らすようになると予想されています。
国連の予測によると、人口1000万人を超える「メガシティ」は、2018年が33都市(途上国27)でしたが、2030年には43都市(途上国36)と予想されています。
新興メガシティは、アジア・アフリカを中心にどんどん増えています。
3.新興メガシティの特徴
欧米の都市化は、数百年の時間をかけて、都市部に雇用だけでなく、娯楽や情報、医療、教育の機会を蓄積させてきたことで、「都市のエコシステム」を作り出しました。
農村部から都市に移動した人たちは、都市のエコシステムに吸収されて、活発な経済活動の人材不足を補い、さらなる経済の発展をもたらしてきました。
日本の場合は、戦後の数十年の間に急速に都市化しました。
エコシステムとして循環が成立せず、副産物として生まれた「ニュータウン」は、高齢化に苦しんでいます。
そして現在の新興メガシティや発展途上国の都市化は、経済成長を伴わない場合も多く、荒れた農地を放棄して、職を求めて流入してくる場合が多く、高層ビルやマンションと同時に、巨大なスラム街も形成しています。
日本の都市の成熟化を考えることは、新興国の急速な都市化に対する「課題先進モデル」を提示することになるのではないでしょうか。
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