社寺再考の第10回(最終回)は、現代都市において神社仏閣を再生させる方向性と、その紅葉についてまとめました。
【内容】
次世代の神社仏閣の位置付けと方向性
静脈系の価値提供を核にした社寺経営
社寺が変われば、都市も社会も変わる
1.次世代の神社仏閣の位置付けと方向性
これまでの考察の中で、「シン地縁インフラ:神社」「シン血縁インフラ&シン自縁インフラ:寺院」と言う位置付けが浮かび上がってきました。そして其々を「ミュージアム機能」としているのは、「既存の神社仏閣の解説・解釈だけでは、現代人に伝わらない」からです。
神社が持つ「大いなる自然」とのつながりや、寺院が持つ「血のつながり」や「東洋哲学・道」などの要素を、もっと分かりやすく伝える必要があるのです。
そのためには「END展」で活用されたような「マンガとのコラボ」が有効であり、「道」として習得するための実践方法も、科学的なエビデンスを含めて、もっとオープンにする必要があります。
先の事例でしましたように神社仏閣は、極めて高いマーケティング感覚を持っていたわけですから、都市における位置付けと方向性さえ分かれば、柔軟かつ機敏に対応していけると考えています。
2.静脈系の価値提供を核にした社寺経営
これまでの考察で、現代都市は何でも、手に入るように見えながら、極めて現世的・物質的な分野に限られ、いわゆる「動脈系の価値提供」に、偏っていることがわかります。
都市における神社仏閣は、「静脈系の価値提供」を担うインフラ」として極めて高い潜在性を秘めているのではないでしょうか。
宗教施設としてではなく、静脈系の価値提供を行う体感型ミュージアムとして、経営(企画・設計・運営)していくことで、利用対価を収益化していくことが可能になります。
そして静脈系インフラとしての経営は、従来の動脈系施設のような利益追求型ではなく、共感・共創型の方策の方が、親和性が高く、サスティナビリティやステイクホルダー重視の時代動向にも整合すると考えます。
3.社寺が変われば、都市も社会も変わる
「静脈系インフラ」が定着すると、都市に対して「終の住処」として定住意識が芽生えるのではないでしょうか。
これまでどうしても地方からの上京組を含めて、都市居住には「仮住まい感覚」があり、子供を介したママ友程度で、コミュニティ意識が希薄でも当然と言われてきました。
しかし「静脈系インフラ」を中心とした活動や交流を通じて「終の住処」という認識が共有されれば、欧州の都市居住における教会コミュニティを現代的にアレンジした形で、都市に対してコミットし、愛着が高まっていくと考えます。
さらに「死に対する知識と覚悟」を持つようになることが重要です。
これまで日常生活から切り離されタブーとされてきた「死」について、考え話し合える場所ができることで、いたずらに死を恐れることも無くなり、生にしがみ付くような延命措置なども、必要なくなるのではないでしょうか。
近代以降の都市は「生」を中心に、もっと言えば「生産」を中心に計画・開発されてきたと言えます。
「大いなる自然」や「血のつながり」「東洋哲学・道」を、視野に入れた都市づくりは、神仏習合の文化を持つ日本だから可能な、そして超高齢化社会の日本だから必要なコンセプトだと考えます。
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