コロナ禍を経て、ハイブリッドワークが定着しつつあります。今後はテレワークの一層の進化に伴い、都市も企業オフィスも「日常的に通う場所」から「わざわざ出掛ける場所」になると想定されます。今まではオフィス勤務を前提にして、如何に快適なオフィス環境を提供できるか?が課題でしたが、これからは、まず「通勤」か「在宅勤務」かの選択肢があり、通勤の場合は「出社する価値のある環境」を提供できるのか?が問われる時代になるのです。自宅や郊外サードプレイスでは得られない「穏やかな緊張感」を纏った創造性、生産性の向上が期待できる環境が求められると考えます。企業オフィスでは対応できないこの環境は、都心の公園の提供価値に一つになるのでは無いでしょうか。公園というより庭園、自己と対話できる禅庭、単に観賞するだけでなく、そこで創造活動ができるような超集中・創造環境の提供です。ニューヨーク近代美術館の中庭や金沢にある鈴木大拙ミュージアムの中庭のようなイメージの「アーバン禅庭」です。屋外で緊張感のある空間でありながら、時間や季節の変化・うつろいを味わい、風や光と対話を楽しめる環境です。決してオンライン空間に閉じこもって、妄想を膨らませてしまわない、自然との繋がりの中での自分の存在を確認できる環境です。オンライン1stの時代だからこそ必要な、リアル世界とじっくり交感できる環境価値を提供します。もちろん基本的な通信環境や散策・気分転換に適した環境も添えられます。
そして創造空間として、愛着を持つとともに、自然との交感の機会として「作務」が有効だと考えます。作務とは禅寺における清掃などの労務行為で、環境維持に役立つと共に、創造活動に至るルーティンであり、修行の一環として位置づけらてれます。アーバン禅庭では、まず身の回りを清め、磨き上げる「作務」を通して、自然と対話しながら、精神を解放・浄化し、創造の準備をしていくプロセスが有効と考えます。またアーバン禅庭の構成要素も、作務を通した維持管理を前提に、「経年進化」を期待させる素材や設えの検討が可能で、苔庭や砂州、庭木などが従来の公園とは一線を画すリアルな存在感を示すことになると想定されます。
都心のアウトドア・オフィスとして、都市公園の一部を「アーバン禅庭」に活用することは、オンライン1stの時代の都心の魅力化に有効だと考えます。
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