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コリビングの未来 コリビング ⑩

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 4月1日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. コリビングの拡張

  2. 「何とかなる」共助づくり

  3. 静脈系エコシステムが作る優しい未来

 

 

1.コリビングの拡張

以前あるプロジェクトで、成瀬・猪熊建築設計事務所が興味深い次世代シェアハウスを提案していました。

大規模な集合住宅の一案として、メゾネット形式で、上階に個室とトイレ・シャワーなどを含む、最低限のプライベートスペースをまとめ、下階に、リビングやダイニング・キッチン、浴室などを用意しています。

プライベートスペースに複数の個室を用意することで、単身者だけでなく、子育て世帯にも対応可能になります。

この次世代シェアハウスであれば、プライベートを適度に確保しながら、日常的に住民間のコミュニーケーションが生まれます。

現状のコリビングは、シングル層を対象にして、働けて遊べて住めるシン・アーバンライフスタイルを提案しています。

今後はこの考え方を拡張すれば、子育てファミリーやシニアにも対応できるのではないでしょうか?

共用施設の機能や役割は変えていく必要がありますが、基盤になる「程よい隣人関係」が、子育てや見守りを支えることが可能にしていくと考えます。

世帯単位で各住戸を孤立させてしまった、標準設計の「殻を破る」考え方がここにあるのです。

 

2.「何とかなる」共助づくり

名古屋大学宇宙地球環境研究所の坪木和久教授は、自然災害の被害の規模を検討する指標として、「損害保険金の支払額」を例示されています。

2020年9月の一覧表では、上位10位までの8位までが台風によるもので、第9位は「平成30年7月豪雨」になっています。

1位は「2018年の台風21号」で、関西国際空港を水没させ、近畿地方に大被害をもたらし、支払額は、1兆678億円に上ります。

実際の被害額は、この数倍になると予想されますので、一つの台風で数兆円の損害が出たことになります。

台風は日本の災害の最大要因なのです。

そして、気象庁の観測によると、日本の平均気温は、100年あたり1.24度上昇しており、台風の供給源である海水温が上昇傾向にあるのです。

災害大国日本における「安心」とは、地震や台風などの災害が【起きない】と言う「安心」でなはく、災害が【起きても何とかできる】「安心」だと考えます。

いつ起きるか分からない自然災害に対して、一人で「不安」を抱えて暮らすよりも、「程良い隣人関係」で【何とかできる】と言う自信が、生きる実感をもたらすのではないでしょうか。

そして【何とかできる】根拠として、自分の身の回りの「程よい隣人関係」は、日々の暮らしを彩り、人生を豊かにしてくれます。

少し前に、Googleが採用した「心理的安全性」と言う考え方が、会議での活発な意見を促し、職場の生産性を高めると言う、研究報告が話題になりました。

次世代シェアハウスにおける程よい隣人関係」が、「心理的安全性(=安心)」の子基盤になり、そこに暮らす人たちの幸福度を高め、クオリティ・オブ・ライフの実現に寄与することにつながると考えます。

 

3.動脈系エコシステムによる優しい未来

「程良い隣人関係」は、防災の視点だけでなく日常的にも、静脈系の(エコ)システムを生み出します。

静脈系エコシステムは、社会の中で「居場所と出番」を提供してくれます。

社会的には過度のビジネス思考では、賄えない活動を補完するとともに、ギスギスしてしまいがちな人間関係の潤滑剤としての役割を担います。

今後は、そこに生まれる「程よい隣人関係」が、企業にとっての共創やプロモーション活動をする際の舞台やパートナーとして、極めて貴重な存在になると考えます。

何より成長を前提にした動脈系システムへの偏重が、地球環境とのバランスを崩しつつある状況への対処策として、静脈系システムの価値を見直す必要があるのではないでしょうか。

「社縁」が消滅した現代に、人は何らかのコミュニティに帰属したいという欲求を持っています。

コリビングを中心とした「程良い隣人関係」が、経済一色・消費者至上主義ではなく、「優しい未来」作りの基盤になるのではないでしょうか。

 
 
 

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