【内容】
1.自己判断の難しさ
2.他人への支援の難しさ
3.防災コストの難しさ
シン防災まちづくりを検討するにあたっては、防災施設を建造などのハード要件ではなく、ソフト要件を重視します。
そして防災時のステップである、①発災時②避難生活時③復興時への対応では、①発災時の避難対応に重点を置いて検討したいと考えます。
この前提の元で、シン防災まちづくりの課題を整理します。
1.自己判断の難しさ
発災時に一番大切なことは、「自助:共助:公助=7:2:1」と言う阪神淡路大震災の事例を踏まえて、「自分の命は、自分で守る」という意識が原則になります。
政府も「住民による自主避難の支援が、自治体の役割である」と、避難の判断の主体を、行政から住民に転換することを明示しています。
この「自主避難=自分で判断する」ことは、現代の日本人が最も苦手にしていることではないでしょうか。
多くの人が、「自らの免責」と「他者への帰責」を求めるような風潮で、先ほどの「自助・共助・公助」の定義でさえ、お互いに責任転嫁する材料に、されてしまっているのが実情です。
2.他人への支援の難しさ
電車でお年寄りなどに席を譲るような場面で、「断られたらどうしよう」と言う意識で、躊躇してしまうことは、日本人なら誰でも経験があります。
「要支援者」に対して、どのように声がけし、手を差し伸べるのか?も課題です。
地域における「要支援者」の名簿についても、身体障害者は登録されても、知的障害者が漏れていたり、65歳以上の単身世帯は、一律で記載されていたりという「精度の過不足」が指摘されています。
また「個人情報」を所持することの責任を恐れ、要支援者名簿の受け取りを拒否する自主防災組織もあるといいます。
「助け合い」は近所が基本で、近所でできないことを、地域全体で支えてもらう事になります。
今後ますます少子高齢化が進むことを前提にすると、要支援者に声がけすること、担い手不足への対応、近所付き合いの希薄化への対応が課題と言えます。
3.防災コストの難しさ
「少子高齢化」や「環境問題」を例でも明らかですが、人間は目の前で顕在化している事象には対処しても、将来起こるであろう事象を予測して、予め準備することには、極めて消極的で先送りしてしまいます。
健康まちづくりを検討する際に、専門家から「日本人は、健康管理に直接投資することを嫌う傾向にある」とコメントされました。
「健康を目的にするのではなく、いつの間にか健康になっていた状況が望ましい」と言う事です。
事業者目線では、BCPなど継続性を担保するための措置を講じますが、日常生活感覚では、防災まちづくりに対しても、「賢明な決断」を前提にするのではなく、「いつの間にか防災活動になっていた状況づくり」が必要なようです。
防災の仕組みの生活実装が課題です。
このような課題に対応するための方策を検討していきたいと考えます。
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