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共感・対話・継承をつなぐ体験型メディアへ Jカルチャーコンプレクス ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 6月2日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 「共感を生む装置」としてのマンガ

  2. マンガは「共感から対話へ」広がるプラットフォームに

  3. 「未来への継承メディア」として進化するマンガ

 

 

 

単独での市場規模の広がりやファッションをはじめとするライフスタイル分野との横断的なコラボ展開に加えて、マンガ・アニメが持つ体験型メデイアとしての可能性についても整理しておきます。


1.「共感を生む装置」としてのマンガ

マンガは、単なる娯楽メディアにとどまらず、現代社会における重要な「共感装置」として機能しています。

物語に登場するキャラクターやシーンは、受け手の経験や感情と重なりやすく、強い情緒的なつながりを生み出します。たとえば、少年が困難を乗り越える姿を描く『僕のヒーローアカデミア』は、多くの読者の「過去の自分」や「理想の自己」と重なり、深い共感を呼んでいます。

また、マンガは間接的なコミュニケーションが難しい状況でも、キャラクターを媒介とした対話を促す「緩衝材」として有効です。

学校教育では、いじめや多様性をテーマにしたマンガ(例:『聲の形』)を通じて、生徒間で間接的に価値観を共有する試みが行われています。

さらに、SDGsや医療・メンタルヘルスといった専門的なテーマも、『はたらく細胞』のように親しみやすいストーリーで伝えることで、一般層への理解促進に役立っています。

物語性を持つマンガは記憶に残りやすく、感情と結びついた形で知識や経験を継承する力も備えています。

重要なのは、「説教臭さ」を避けることです。読者自身が登場人物の選択や葛藤に共鳴し、自分自身の問いを立てるよう設計することが求められます。

例えば、『進撃の巨人』は善悪の境界線が揺れる物語構成によって、読者に深い自己問答を促しています。

意外性やユーモアも大切な要素であり、『銀魂』のようなジャンルを越えた笑いとシリアスの融合は、読者の情緒を大きく揺さぶる成功例と言えるでしょう。


2.マンガは「共感から対話へ」広がるプラットフォームに

今後、マンガは単に読むものから、「共感と対話」を生み出すプラットフォームへと進化していくと考えられます。

たとえば、マンガアプリ「ピッコマ」では、作品ごとに読後コメント欄が活発に機能しており、読者同士が自発的に感想を共有し、対話が生まれています。

また、展示イベントでも「共感スタンプラリー」のような手法が可能です。『鬼滅の刃』原画展では、共感したシーンにシールを貼るコーナーを設け、読者同士の無言の「共鳴」を可視化する試みが成功しました。

さらに、ストーリーマンガに「あなたならどうする?」という分岐型アンケートを組み込むことで、自ら考え、他者と意見交換するきっかけを生み出すことができます。たとえば、防災マンガ『東京マグニチュード8.0』に「あなたならどの道を選ぶか」という選択肢を加え、避難行動をシミュレーションする体験型展示を展開する、といった形です。

読後に「どのキャラクターに共感したか」を投票し、リアルタイムで傾向を可視化する仕組みも有効でしょう。これにより、企業の組織開発研修や地域づくりワークショップなどでも、感情の流れを共有し、対話のきっかけとすることが可能になります。

また、災害被災地の記憶や、看取り体験、多文化家族の物語をマンガ形式でアーカイブ化するプロジェクト(例:陸前高田市の復興マンガプロジェクト)も進んでおり、情緒的な記憶を未来へつなぐ実践が始まっています。

認知症啓発マンガでは、本人、家族、医療者のそれぞれの視点から描くことで、読者に立場の違いを体験的に理解させ、深い共感と多角的理解を促す試みも増えています。


3.「未来への継承メディア」として進化するマンガ

マンガの可能性は、オフィス文化や社会課題への応用にも広がっています。

たとえば、トヨタ自動車では「現場力」の暗黙知を若手に伝えるために、熟練者の日常をストーリーマンガにまとめた事例があります。これにより、マニュアルでは伝わらない細やかな判断や心構えが自然に継承されています。

また、架空の社内マンガ「うちの課長はこうして動く」シリーズのように、日常業務をキャラクター化することで、世代間の対話が生まれ、組織文化の理解と共感が進む効果も期待されています。

社会課題との連携も有望です。たとえば、環境問題をテーマにしたマンガ『青のフラッグ』の読後に、「あなたにできる小さなアクション」を提示するキャンペーンを組み合わせれば、読者の意識変容を具体的な行動につなげることができます。

防災啓発でも、マンガ『日本沈没』のシーンを基にした避難体験ワークショップを展開することで、感情的共感から実践行動へと橋渡しを促す仕掛けが可能です。

このように、マンガは「共感を引き出し、記憶に刻み、対話を生み、未来へつなぐ」体験型メディアへと進化していくでしょう。これからのマンガ活用は、単なるストーリー提供にとどまらず、人と人、人と社会をつなぐ「共感のエコシステム」を育む役割を担うことになると考えます。

 
 
 

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