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基本方針 シンふるさと論 ⑤

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 5月9日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. シンふるさと論の前提

  2. 基本的な視点

  3. 3つの方策

 

  

1.シンふるさと論の前提

近年、日本の都市政策において「ふるさと論」は、地域活性化やアイデンティティの視点から再評価されています。

少子高齢化や人口減少が加速する中で、都市と地方の関係を見直し、新たなふるさとの概念を確立することが求められています。

従来の「ふるさと」は生まれ育った土地を指すことが多かったのですが、現代では都市化と人口移動の影響で、物理的な故郷を持たない人が増えています。

この状況を踏まえ、都市政策における「ふるさと論」の課題を整理し、今後の方向性について考えていきます。

 

 

2.基本的な視点

ふるさとをめぐる議論において、単なる地理的概念ではなく、社会的・心理的な要素を含めた包括的な視点が求められます。

都市化の進行により、物理的な「ふるさと」を持たない人が増える一方で、人々がアイデンティティや精神的な拠り所を求める傾向は強まっています。

そのため、都市政策においてふるさとを捉える際には、以下の視点を重視する必要があります。

 

  1. 関係人口の創出

地方に定住するのではなく、関わりを持つ「関係人口」を増やすことが、現代のふるさとづくりには不可欠です。

都市住民が地方の祭りや伝統行事に参加し、地域活動に関わる機会を増やすことで、ふるさとへの愛着が醸成されます。

  1. ふるさとの多様化

かつてのように「生まれ育った場所がふるさと」という単一的な考え方ではなく、個人の選択によって新しいふるさとを築くことができるような環境整備が必要です。

たとえば、移住体験プログラムや地域と都市をつなぐ交流拠点の整備などが有効な施策となります。

  1. 共創の場づくり

地域の住民だけでなく、都市住民や移住者が共に地域社会を形成する仕組みを、整えることが求められます。

地域の空き家を活用したコワーキングスペースや、地域住民と都市住民が共に運営するシェアビレッジなど、多様な関わり方を可能にする制度設計が重要です。

 

 

3.基本方針

本稿では、「ふるさと交流」「街なかふるさと」「共創ふるさと」の三つの方策を通じて、新たなふるさとの在り方を提案します。

 

方策1:「ふるさと交流」では、都市住民と地方住民の交流を促進し、相互に関心を持ち続ける仕組みを構築します。都市・農村ペアリングプログラムや、都市住民が一定期間地域に滞在できる「ふるさと訪問制度」などが挙げられます。

方策2:「街なかふるさと」では、都市部でもふるさとを感じられる空間の整備を推進します。都市内に地域文化を体験できる拠点を設け、地域の特産品や文化を身近に感じられる機会を増やすことが求められます。

方策3:「共創ふるさと」では、若者・高齢者・移住者が共に新しいふるさとを築くための仕組みを整備します。地方の空き家を活用したゲストハウスの運営や、若者が地域活動に定期的に参加できる制度などが有効です。

 

 

これらの施策を通じて、ふるさとを「記憶の中の場所」から「今、関われる場所」へと転換し、多様な関係性を構築することが目指されます。

都市と地方の関係を柔軟に設計し、移住を伴わずとも地域とのつながりを持つことで、持続可能な地域社会の形成が期待されます。

今後の都市政策では、従来の「ふるさと」の概念を超え、多様な価値観に基づいた新たなふるさとの創造が不可欠です。

物理的なふるさとだけでなく、共感や場、世代継承といった視点からふるさとを捉え直し、都市住民と地域住民が共にふるさとを創り上げることが求められます。

これにより、都市と地方の関係をより豊かにし、持続可能な社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出すことが可能になると考えます。


 
 
 

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