基本方針:まちづくりの担い手を広げるインセンティブ設計 「関わり資本」による都市再生 ⑤
- admin
- 14 分前
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【内容】
第1章:「関わること」に意味を感じるインセンティブの設計
第2章:「つながり」が関わりを育てる社会的インセンティブ
第3章:「関わり資本」による都市再生の3戦略
第1章:「関わること」に意味を感じるインセンティブの設計
これからのまちづくりにおいて最も大切な資源は、「関わる人」です。
どれほど立派な計画や空間があっても、それを育て、使い、継続していく人がいなければ、都市は持続可能な存在にはなりません。
しかし、まちづくりは一部の熱心な人だけが担えるものではなく、より多くの人々が「自分も関われる」と思える環境づくりが不可欠です。
まず必要なのは、「内的動機=自己実現」につながるインセンティブです。
自分の行動がまちに影響していると実感できる仕掛け、つまり“承認欲求への応答”が重要です。SNSやマップ上で名前が記載されたり、住民投票に自分の提案が反映されたりといった可視化の工夫により、「このまちを変えたのは自分たちだ」と思えるプロセスが生まれます。
さらに、まちを「表現や創作の場」として位置づけることも効果的です。
空き家や空き店舗、公園などの余白空間を使って、個展や屋台、小さなイベントを自由に開けるようにすれば、まち全体が“活動のフィールド”となります。高校生や大学生がプロジェクトベースで参加し、成果をポートフォリオとして残せるようにしたり、社会人が副業やリスキリングとして関われる仕組みをつくれば、まちは個人の学びと挑戦の舞台になるのではないでしょうか?。
第2章:「つながり」が関わりを育てる社会的インセンティブ
人は、つながりの中でこそ行動意欲を高めます。
まちづくりの担い手を育てるうえで、次に重要になるのが“関係性”に基づくインセンティブです。まちづくりを通じて地域内外の面白い人、頼れる人と出会い、人間関係が広がることは、それ自体が大きな報酬となります。
たとえば、「まちづくり部」や「週末活動部」のような名前を冠した緩やかなチームをつくることで、趣味や仕事、育児などを超えてつながるサードプレイス的なネットワークが育まれます。
こうしたつながりを持つことで、関わることが「孤独な行動」ではなく、「誰かと共にある時間」として感じられます。
また、活動の中で生まれる“小さな共助経済”も見逃せません。
プロジェクトに関わることで地元通貨や地域ポイントがもらえたり、地元店舗で使える参加特典が提供されたりすることで、まちの中で関与が循環する仕組みができます。物々交換やシェアによるリワードも、金銭的報酬とは異なる満足感を生み出します。
そして何より重要なのが、「物理的な居場所の保証」です。
関わった人が自由に使えるラウンジや空きスペース、オープンな活動拠点があれば、「いつでも戻ってこられる場所がある」という安心感が心理的な帰属意識につながり、継続的な参加を促します。
第3章:「関わり資本」による都市再生の3戦略
最後に不可欠なのが、“制度的・経済的インセンティブ”の整備です。
とくに若年層や高齢者、シングル世帯などにとって、「関わることが経済的な負担にならない」仕組みは基本条件となります。
交通費や材料費の実費補助、小さな謝礼の支給といった最低限の支援は、誰もが気軽に関われるまちづくりには欠かせません。
また、活動に挑戦する人を応援する制度として、クラウドファンディングや共創型補助金の活用も重要です。
行政が「いい企画を持っている人を支援する」仕組みを整えれば、地域から新しいリーダーやチームが自然と育っていきます。採択方式も、個人よりもチーム単位で支援することで、仲間づくりそのものをインセンティブに変えることができます。
加えて、関与が継続するよう地域ポイントやクーポン制度を導入することも有効です。たとえば、月に10時間以上活動した人に地域通貨を支給するといった仕組みがあれば、無理なくリピーターを育てることができます。
さらに、これらの制度を機能させるためには、「誰が担い手になれるのか」という想定そのものを広げる必要があります。
これまでは町内会や商店会の関係者、定住者、空間の所有者といった人々が中心でしたが、今後は、学生や移住者、副業人材、越境会社員、SNS発信者など、多様な背景を持った“外からの担い手”も積極的に関与できる設計が求められます。
まちは、特定の人たちが守るべき対象ではなく、誰もが少しだけ関われる“開かれた場所”であるべきです。そのための、3つの戦略を提案します。
戦略①「関わりしろを用意する」
戦略②「自分ごと化できる仕組みをつくる」
戦略③「続けられる環境を整える」
このような戦略に基づいて、制度・空間・文化を見直す必要があります。まちを動かすのは、一部の人の情熱だけでなく、「関わることが楽しく、報われる」環境そのものなのです。
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