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文化PPPの効用:文化施設 PPP ⑨

  1. コスト補填や観光集客を超える価値づくり

  2. 「心の基礎体力」づくり

  3. アート思考の普及




1.コスト補填や観光集客を超える価値づくり

一般的に、ミュージアム変革の効用に挙げられるのは、「コスト補填」や「観光集客」です。

レストランなどの事業施設を隣接させて、その収益で運営コストを補填したり、謎解きゲームやスタンプラリーなどのプロモーションで、観光客を集めるなどの手法です。

このようなミュージアム周辺での施策に加えて、本シリーズでは、ミュージアムの一部機能のあり方を含めて、「変革」を検討してきました。

職人的に研究・展示するだけでなく、「どうやればお客が、喜び、リピートしてくれるのか?」という企画・実施・検証するプロセスを繰り返せば、企画の的中率が向上し、来場者数も増加し、やり甲斐・実感が生まれて来るのではないでしょうか。

前述の提案で述べたような「ホテル」「テーマパーク」「クリエイティブ・サロン」などに見立てながら、ミュージアム活用することによる「収益」及び「集客」の向上も可能だと考えますが、ミュージアム変革の効用は、「さらに高いゴール設定」を目指すべきだと考えます。


2.「心の基礎体力」づくり

「アート街づくり」のシリーズで、アートプロジェクトの効用について、アーティストという「異質を孕む」ことで、その生き様に刺激を受け、アーティストによるリサーチやヒヤリングを通じて、地域の人たちが「自分を語る」ことが重要だと言う事を取り上げました。

自分の生い立ち、人生の山や谷、出逢った人々、この街との関わりなどを、自分の言葉で語ることは、自分の人生と価値観を一覧し、様々な気づきを得る機会になります。

これは自分自身の内省を通じて「心の基礎体力」を高める手法と言えます。

「心の基礎体力」が高まり、日常的・表層的ではない視点が、自分の周辺や街に向けられると、様々な人生が複層的に寄り合う舞台としての「街」を実感できるようになります。

このプロセスを経て、自分の人生に自信を持ち、自分の街・コミュニティに対しても、愛着と誇らしさを実感する事になると考えます。

次世代のミュージアムは、この「心の基礎体力を高める拠点」として機能していくのではないでしょうか。


3.アート思考の普及

さらにビジネスにおけるアートの導入効果として、①ブランディング、②イノベーション、③組織活性化、④ビジョン構想の4点からなる「アート思考」が挙げられています。

アーティストは、自分自身への眼差しと、社会への眼差しの二つの問題提起の視点を通じて、これまで見たことも無かった着眼点で作品を通じて、世にその想像力の産物を問いかけ、批判や孤独と戦いながら、自分を信じて制約条件を乗り越えて、アート制作を実践していきます。

これはスタートアップのプロセスそのものになります。

アーティストもスタートアップも、元は社会に問題を感じ、深く想像を巡らせ、いろいろな苦労を伴いながら実践し、その結果としてあらゆる人たちと共創しています。

「ビジネスにアートを取り入れる」または「アートとビジネスを結びつける」というよりも「ビジネスパーソンにアート思考を取り入れること」にこそ、本当の紅葉と言えるのでは無いでしょうか。

ミュージアムを中心にして、「アート思考」を拡げ、社会を前向きに活性化していくことが、究極のゴールと考えます。

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