top of page
検索

未来 シン・インキュベーション ⑩

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2024年12月16日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 企業の求心力

  2. スタートアップの6次産業化

  3. スタートアップ企業の故郷

 

 

1.企業の求心力

小田急電鉄は、コロナ禍を経て、「社内ベンチャーの育成」に力を入れています。

「クライマー制度」という独自の社内ベンチャー制度で、社内からアイディアを募り、さまざまな新規事業開発を試みています。

特徴的なのは、「地域の課題解決」というスタンスで、デジタルを活用して、鉄道とは直接関係のない新規事業を開発している点です。

ごみ収集支援サービスの「Wooms」や、獣害防止サービスの「ハンターバンク」、町内会などのコミュニティ支援サービスの「一丁目一番地」などが、自走しだしています。

まだまだ事業規模としては、小さいですが、「沿線課題の解決が、沿線価値の向上につながる」という「地域価値創造型企業」というビジョンに基づき展開しています。

企業としての求心力を考える時、売り上げの拡大などの「事業力」はもちろん必要ですが、これと並行して、社員のモチベーションなどの「社員力」と、地域社会との共生を通じた「社会力」とが「三位一体」になる必要があると考えます。

鉄道会社に限らず、社員が地域の課題解決を通じて、働き甲斐を実感していくことは、「社員力」と「社会力」の向上につながるのでは無いでしょうか。

小田急電鉄の試みは、日本型スタートアップが街との連携を図るロールモデルになると考えます。

 

2.スタートアップの6次産業化

飲食業界はコロナ禍で大打撃を受け、生き残りに向けて様々な工夫を模索しています。

テイクアウトやデリバリーの充実といった手法もありますが、カフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さんが提唱するのは「飲食業の6次産業化」です。

6次産業とは元々は農業活性化のコンセプトで、1次[農業]×2次[加工]×3次[飲食サービス]の掛け合わせによる総合的な体験提供と付加価値づくりを意味します。

単に「美味しい料理を提供する」だけではない総合的な体験提供が必要だということで、例えば屋上には農場、三階には加工場、二階には調理場、そして一階にダイニングといった「食のイノベーションビル」なども提案されていました。

ストーリー価値を語れる「都市型6次産業としての飲食業」が必要だということです。

同様にスタートアップ支援施設でも、単に情報やビジネスアイデアを競うだけではなく、「スタートアップの6次産業化」という視点が有効ではないでしょうか。

創造の源泉を深掘りし、街の肌感、現場の顧客との直接のやり取りを通じて、提供する商品・サービスのチューニングを繰り返す、一気通貫のプロセスが、投資家やパートナー企業に対するエビデンスと説得力になるのだと考えます。

 

3.スタートアップ企業の故郷

以前「我が家や故郷」は一般的な「家や土地」とどう違うのかを議論したことがあります。

その時の結論は「人は成長期の体験が最も印象に残る」ので、「成長期を過ごした家を我が家、土地を故郷、そして国を祖国と感じる」のでは無いかと言うことでした。

一般的に「幼少期の成長」が最も大きいので、そこが故郷になる場合が多いのでは無いでしょうか。

スタートアップ企業が、成長期を過ごす街は、「企業の故郷」として印象に残り、恩義を感じるのでは無いでしょうか。

そして「スタートアップ企業の故郷づくり」の視点は、「寛容な社会化」を推進するインフラになるかもしれません。

学生やアーティストと同様に、スタートアップ企業の特権は「様々なことにトライする事」が許される立場であると考えます。

何かあれば、ディスるばかりでホメなくなった日本社会、やり直せなくなった不寛容な空気感を変えていくキッカケになると思います。

スタートアップ企業を中心に、究め合い褒め合う知的コミュニティが、拡がっていくことが、明るく寛容な未来を作っていくことにつながると確信します。

 
 
 

最新記事

すべて表示
共体験の定義 共体験デザイン ②

【内容】 第1章 「共体験」とは何か 第2章 都市開発における共体験の広がり 第3章 都市開発での実践方法   第1章 「共体験」とは何か 「共体験(Co-experience)」とは、複数の人が同じ時間や場所で体験を分かち合い、その中で互いに感情や意味を育てていくことを指します。 例えば、一人で食事をするのと、友人や家族と一緒に食事をするのとでは、同じ料理でも感じ方が違います。 それは、周りの人

 
 
 
今なぜ 共体験なのか? 共体験デザイン ①

【内容】 第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 第2章 経済的・技術的背景からみる共体験デザインの価値 第3章 多様性・実務性を踏まえた都市開発の新たなインフラ     第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 現代の都市は、人の数こそ多いものの、匿名性が強まり個人は孤立しがちです。 都市生活者の多くは、道を行き交う群衆の中で互いに接触することなく、ただ通過していく日常を過ごしてい

 
 
 
AI共創オフィスが拓く未来 ─ 人とAIが“共に働く”社会のビジョン AI共創オフィス ⑩

【内容】 第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ 第2章:企業文化が“見えないOS”として浮上する 第3章:本社とサテライトの分担による「立体的オフィス戦略」     第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ かつてオフィスは、社員が集まり、情報をやり取りしながら仕事を進める「作業の場」でした。しかし、AIが高度に発達し、検索・提案・要約・意思決定の一部を代替するようになった

 
 
 

コメント


bottom of page