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次世代の地方駅ビルの提案 ローカルリンクステーション ⑦

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 9月22日
  • 読了時間: 4分

【内容】

第1章:地方駅ビルに求められる“新たな社会的役割”

第2章:駅ビルを“つながる・育てる場”へ

第3章:社会性と創造性を備えた未来の駅ビルへ

 

 

第1章:地方駅ビルに求められる“新たな社会的役割”

地方都市の駅ビルは、かつて地域の玄関口として、通勤や通学、買い物や観光の中継地としてにぎわいを見せてきました。しかし現在、こうした駅ビルは大きな岐路に立たされています。郊外型ショッピングモールの台頭や、テレワーク普及による駅利用者の減少などにより、駅ビルの集客力は著しく低下しています。館内を見渡せば、空き区画が目立ち、物販や飲食テナントの撤退が続いているのが実情です。

このような現状を踏まえ、JR東日本がいま取り組むべきは、駅ビルの再定義です。単なる商業施設としての延命ではなく、「地域と都市をつなぎ、新しい価値を育てる社会的装置」としての再構築が求められています。

その中核となる考え方が、「生業(なりわい)の産業化」です。

生業とは、地域に根ざした家族的・個人的な営みのことであり、和菓子屋や豆腐屋、町工場や直売所などが代表例です。これらは一見、小規模で非効率に見えるかもしれませんが、地域文化の担い手であり、地元の誇りでもあります。しかしながら、高齢化や後継者不足、販路の限界により、これらの生業は多くの地域で消えつつあります。

そこで「産業化」が必要となります。産業化とは、他者が継続できるような仕組みを持つ事業体へと進化させることであり、マニュアルの整備やブランドの確立、販路開拓や資金調達、人材育成などのビジネス視点を注入することを指します。

これは単なる事業承継ではなく、“進化型の承継”といえるアプローチです。

このような変革の受け皿として、駅ビルは理想的な舞台となり得ます。

駅という公共性の高い空間において、地域の知恵と都市の知識をつなぐことで、小さな生業がスケーラブルな事業へと変わる支援ができるのです。

 

第2章:駅ビルを“つながる・育てる場”へ

駅ビルを再生するにあたっては、「モノを売る場」から「価値を育てる場」へと視点を転換する必要があります。

従来型のテナント誘致やリニューアルだけでは、人口減少・需要縮小が進む地方都市の現実に対応しきれません。これからの駅ビルに求められるのは、地域の潜在的な魅力や資源を発見し、それらを可視化・編集しながら、次世代へと受け継ぐ“育成の場”となることです。

このような機能を担う第一歩として、駅ナカの空きスペースやイベントスペースを活用し、生業の紹介や試食・展示・販売といった小規模なプロジェクトを実施することが挙げられます。

たとえば、老舗和菓子屋の実演販売や、職人による技術ワークショップ、地域の農産物を使った共創メニューの開発などは、地域の魅力を体験的に伝える仕掛けになります。

さらに、こうした生業の担い手と、都市部の高スキル退職者や副業希望者とを結びつける場としても、駅ビルは有効です。

都市部の人材は経営ノウハウや販路開拓、商品開発のスキルを持ち、一方で地域側は実直な職人気質とユニークな商品を持っています。この両者をつなぎ、価値の“翻訳”を支援するファシリテーター的存在(例:地域コーディネーターやデザイナー)を介在させることで、円滑な共創が可能となります。

また、駅ビルにおける「テスト販売」や「期間限定店舗」といった形式で事業の試行錯誤を行える場を提供すれば、事業者側もリスクを抑えながら市場の反応を確かめることができます。

これは地域にとって、安心して“挑戦できる環境”を整えることでもあります。

 

第3章:社会性と創造性を備えた未来の駅ビルへ

このように、地方駅ビルの再定義は、商業的なリニューアルという次元を超えて、地域社会の再構築に深く関わるビジョンへと進化していきます。

駅ビルが「価値の発見・共創・編集・発信」の拠点となることで、地域内外の多様なプレイヤーが交差し、今までにない化学反応が生まれる場となります。

これにより、駅ビルは単なる“物を売る場”ではなく、“意味をつくる場”へと変わります。そしてその中で、生業は失われゆくものではなく、「継がれ、広がるもの」へと再定義されていきます。

JR東日本にとっても、これは単なる駅ビルの活性化ではなく、「地方の価値と未来を共創する企業」としての使命を果たす重要な一歩となるでしょう。

地方駅ビルを、再び人と想いが行き交うハブへと転換するこの試みは、単に施設の再生ではなく、地域社会の未来をともにつくる社会的プロジェクトです。

 
 
 

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