top of page
検索

次世代ファッションビルの方向性 Jカルチャーコンプレクス ⑤

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 6月4日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 渋谷パルコのリニューアルにみるファッションビルの進化の特徴

  2. 地方都市展開における留意点

  3. Jカルチャーコンプレクスの基本方針

 

 

1.渋谷パルコのリニューアルにみるファッションビルの進化の特徴

2019年に建て替え再開業した渋谷パルコは、ファッションビル再生の最先端モデルとして高く評価されています。

その特徴は大きく5つに整理できます。

  1. 「ファッション+カルチャー+エンターテインメントの融合」

    単なるアパレル集積にとどまらず、任天堂やポケモンセンター、ジャンプショップといったエンタメ要素、ギャラリーや劇場といったアート・舞台芸術、さらにショップとイベントスペースを一体化した多層的な編集がなされています。「ここでしか体験できない」コンテンツを重視する点が特徴です。

  2. 「デジタルとリアルの融合」

    公式アプリ連動による館内ARイベントやスタンプラリー、オンラインストアとのシームレス連携など、デジタルをリアル来館体験の拡張装置として巧みに活用しています。

  3. 「インバウンド対応・国際化」

    多言語対応や海外観光客向け決済サービスを強化し、日本のマンガ・アニメ・ゲーム文化を発信する基地として、外国人観光客を強く惹きつける仕組みを構築しています。

  4. 「SDGs・サステナビリティ意識の取り込み」

    リサイクルブランドの導入やヴィーガン対応メニューの展開など、次世代感度層に向けたサステナブルな価値提案を進めています。

  5. 「街との共生・拡張」

    屋上庭園『シブニワ』の開放などにより、渋谷の街とシームレスに連動する都市型公共空間を生み出しています。

    これらの取り組みにより、渋谷パルコは「買う」だけでなく「体験する」場としても進化を遂げていると言えます

 

2.地方都市展開における留意点

渋谷パルコ型を政令指定都市に展開する際は、単なるブランド移植ではなく、各都市に最適化した「リミックス展開」が成功のカギとな流と考えます。

  1. 札幌では、「アーバン・リゾートカルチャー拠点」として、雪と光をテーマに、北海道発の食・アート・ライフスタイルブランドを編集します。冬季観光と連動し、雪景色を活かしたインスタレーションやギフトマーケットを展開する計画です。

  2. 福岡では、「アジア都市文化ハブ」として、韓国・台湾との近接性を活かしたクロスカルチャー型施設を目指します。韓国・台湾アーティストとの連携や、ストリート×ラグジュアリー編集により、若年層富裕層の誘致を図ります。

  3. 名古屋では、「未来志向型クリエイティブモール」として、ものづくり文化とテクノロジーを融合させた新体験型施設を構築します。トヨタ系ベンチャーとの連携や、体験型デジタルアートの導入により、家族層も視野に入れた展開を想定しています。

  4. 広島では、「ピース&カルチャー・クリエイティブパーク」として、平和と若者表現をテーマに据え、国内外の若手クリエイターを支援する場を創出します。サステナブルファッションの導入や大学連携プログラムも重視していきます。

いずれの都市においても、物販中心ではなく、文化体験型・共鳴型空間を目指すことが不可欠と言えます。

この辺りに次世代のファッションビルのヒントがあるのではないでしょうか。

 

3.Jカルチャーコンプレクスの基本方針

渋谷パルコをもとにしたこれまでの検討を踏まえて、次世代のファッションビルとして、「日本発・世界基準のカルチャー体験拠点:Jカルチャーコンプレクス(略称Jカルコン)」を提案します。

単なる商業施設ではなく、都市の魅力向上、国際文化交流、次世代育成、観光産業振興の中核となる施設を目指します。

その実現に向け、以下の基本方針を設定します。

第一に、「文化資産×産業資源」のハイブリッド化を推進します。マンガ・アニメ・舞台といった日本独自のカルチャーコンテンツを、単なる消費対象ではなく、学びと体験を通じて価値を高め、経済効果を生み出す仕組みを整えます。

第二に、「体験価値と滞在価値」の最大化を重視します。読む・観る・聴く・描く・食べる・買うといった多層的な体験を一体的に設計し、訪問者の感情資本を高め、自然な長時間滞在と高単価消費を促進します。

第三に、「リピート誘発型のコンテンツ更新」を徹底します。常設展示に加え、マイナーチェンジ型のイベント・展示更新を定期的に実施し、「また来たい」「次を見たい」という期待感を持続的に創出します。

第四に、「グローバル対応・国際発信力」を強化します。多言語対応、海外クリエイターとの連携、国際文化交流プログラムを組み込み、世界から訪れるファンに向けた受入体制と発信力を持つ拠点とします。

第五に、「リアル×デジタルのハイブリッド経営」を推進します。来場者限定ECやメタバース展開など、リアル空間を起点にデジタル収益も拡張し、施設の収益多様化と持続成長を図ります。

これらの基本方針に基づき、ハイブリッド・マンガミュージアム、2.5次元シアター、体験型Jカルチャー商業施設の三位一体で、世界に開かれた都市型文化ビルモデルを実現します。

 
 
 

最新記事

すべて表示
共体験の定義 共体験デザイン ②

【内容】 第1章 「共体験」とは何か 第2章 都市開発における共体験の広がり 第3章 都市開発での実践方法   第1章 「共体験」とは何か 「共体験(Co-experience)」とは、複数の人が同じ時間や場所で体験を分かち合い、その中で互いに感情や意味を育てていくことを指します。 例えば、一人で食事をするのと、友人や家族と一緒に食事をするのとでは、同じ料理でも感じ方が違います。 それは、周りの人

 
 
 
今なぜ 共体験なのか? 共体験デザイン ①

【内容】 第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 第2章 経済的・技術的背景からみる共体験デザインの価値 第3章 多様性・実務性を踏まえた都市開発の新たなインフラ     第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 現代の都市は、人の数こそ多いものの、匿名性が強まり個人は孤立しがちです。 都市生活者の多くは、道を行き交う群衆の中で互いに接触することなく、ただ通過していく日常を過ごしてい

 
 
 
AI共創オフィスが拓く未来 ─ 人とAIが“共に働く”社会のビジョン AI共創オフィス ⑩

【内容】 第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ 第2章:企業文化が“見えないOS”として浮上する 第3章:本社とサテライトの分担による「立体的オフィス戦略」     第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ かつてオフィスは、社員が集まり、情報をやり取りしながら仕事を進める「作業の場」でした。しかし、AIが高度に発達し、検索・提案・要約・意思決定の一部を代替するようになった

 
 
 

コメント


bottom of page