第3章 参加デザインは、すでに始まっている
【内容】
1.スポーツは「観戦する場所」から「参加する街」へ
2.劇場は「鑑賞する場所」から「世界観を楽しむ街」へ
3.成功の共通点は「参加デザイン」にある
1.スポーツは「観戦する場所」から「参加する街」へ
横浜スタジアムを本拠地とする横浜DeNAベイスターズは、近年、日本のプロスポーツ界でも特に注目される成長を遂げています。
その背景には、強いチームづくりだけではなく、「参加の仕方」を変えたことがあります。
かつてのスタジアムは、試合を観戦するためだけの場所でした。試合開始前に入場し、試合終了とともに帰宅する。それが一般的な利用スタイルでした。
しかし現在は、その体験が大きく変わっています。
試合前には横浜公園でイベントが開催され、キッチンカーやグッズショップを楽しむ人がいます。
試合を観戦しない人でも、公園の雰囲気を味わい、チームカラーに包まれた街を歩くだけで、ベイスターズとの接点を持つことができます。
試合後も、周辺の飲食店や商店街で余韻を楽しむ人が少なくありません。
つまり、試合は一日の体験の中心ではありますが、そのすべてではありません。
街を歩くことから始まり、少しずつ関わりが深まっていく。この連続した体験が、多くのファンを育てているのです。
2.劇場は「鑑賞する場所」から「世界観を楽しむ街」へ
同じような変化は、文化施設でも始まっています。
その代表例が、赤坂サカスと舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」です。
以前であれば、劇場は作品を鑑賞する場所でした。開演時間に合わせて訪れ、公演が終われば帰宅する。それが一般的でした。
しかし現在の赤坂では、劇場だけが作品の舞台ではありません。
駅を降りた瞬間から魔法の世界を感じる演出があり、街路にはフォトスポットが設けられ、ショップやカフェにも作品の世界観が広がっています。
人々は劇場へ向かうのではなく、街全体でハリー・ポッターの世界を体験しているのです。
劇場はゴールではありません。
街全体が一つの舞台となり、その中を歩くこと自体が物語への参加になっています。
これは従来の「鑑賞型施設」にはなかった、新しい体験の設計と言えるでしょう。
3.成功の共通点は「参加デザイン」にある
横浜スタジアムはスポーツ施設です。
赤坂サカスは劇場を中心とした文化施設です。
一見すると、まったく異なる事例に見えます。
しかし両者には、一つの共通点があります。
それは、「参加する・しない」という二元的な関係ではなく、人と場との関係を少しずつ深めるように設計していることです。
街を歩く。
少し立ち寄る。
雰囲気を楽しむ。
買い物をする。
食事をする。
そして本格的な体験へ進む。
参加には、さまざまな段階があります。
その段階を丁寧につなぎ、一人ひとりが自分に合った関わり方を選べるようにすること。それが、両者に共通する成功の理由です。
私は、このような設計思想を「参加デザイン」と呼びたいと思います。
参加デザインとは、イベントを企画することではありません。
人と場との関係が、一度きりで終わるのではなく、少しずつ深まり、やがて応援する人、支える人、さらには共に価値を創る人へと育っていくプロセスを設計することです。
スポーツでも、文化でも、商業でも、街づくりでも、この考え方はすでに始まっています。
本シリーズは、それぞれの分野で自然に生まれてきたこれらの成功事例を、一つの共通原理として整理し、「参加デザイン」という新しい設計思想として体系化することを目的としています。

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