第7章 参加の入口を増やす 参加デザイン ⑦
【内容】
1.最初の一歩は、できるだけ小さくする
2.入口は一つではない
3.入口は「空間・プログラム・情報」でつくる
1.最初の一歩は、できるだけ小さくする
「もっと多くの人に参加してほしい。」
これは、あらゆる集客施設に共通する願いです。
しかし私たちは、興味を持ったからといって、すぐに本格的な参加をするわけではありません。
例えば、新しいレストランができたとします。
最初から特別なコース料理を予約する人は少ないでしょう。
まずは店の前を通り、雰囲気を眺める。
ランチを食べてみる。
気に入れば、家族や友人を連れてくる。
そして特別な日に利用するようになります。
人との関係は、このように少しずつ育っていきます。
文化施設やスポーツ施設も同じです。
最初からチケットを購入してもらうことだけを考えるのではなく、「少し立ち寄ってみよう」と思えるきっかけを数多く用意することが重要です。
参加デザインの第一歩は、人を集めることではありません。
最初の一歩を踏み出しやすくすることなのです。
2.入口は一つではない
従来の集客では、参加の入口は一つでした。
スポーツなら観戦チケット。
コンサートなら入場券。
美術館なら展示鑑賞。
つまり、「施設を利用すること」が参加でした。
しかし現在では、参加の形はもっと多様になっています。
横浜スタジアムでは、試合を観戦しなくても横浜公園を散策し、イベントや飲食を楽しむことができます。
赤坂サカスでは、劇場へ入らなくても街全体で作品の世界観を体験できます。
商業施設では、買い物をしなくても広場で過ごし、イベントを楽しみ、カフェを利用する人がいます。
つまり、「少し関わる」ことも参加なのです。
参加の入口は、一つである必要はありません。
街を歩く。
写真を撮る。
休憩する。
マルシェをのぞく。
公開リハーサルを見る。
SNSで情報に触れる。
こうした小さな接点が増えるほど、新しい参加者は自然に増えていきます。
参加デザインとは、多様な入口を設計することでもあります。
3.入口は「空間・プログラム・情報」でつくる
では、参加の入口はどのように設計すればよいのでしょうか。
私は、入口には三つの種類があると考えています。
一つ目は、空間の入口です。
広場や公園、カフェ、コンコースなど、誰でも気軽に立ち寄れる場所を用意することです。
二つ目は、プログラムの入口です。
マルシェ、体験会、公開練習、ミニコンサート、展示など、本格的な参加の前に楽しめる小さなプログラムを充実させます。
三つ目は、情報の入口です。
SNS、ライブ配信、街なかのサイン、口コミなど、参加する前から興味を持てる情報との接点を増やします。
この三つが組み合わさることで、人は自然に参加への一歩を踏み出します。
入口とは、単に無料イベントを増やすことではありません。
「ここなら少し関わってみようかな」と思える機会を、街や施設のあちこちに散りばめることです。
参加デザインは、参加者を無理に呼び込む設計ではありません。
人が自ら一歩を踏み出したくなる環境を整える設計です。
そして、その小さな一歩こそが、長い関係の始まりになります。
次章では、この最初の参加を一度きりで終わらせず、継続的な利用やファン化につなげる「参加を育てる」方法について考えていきます。

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