FIACSの本年度の研究テーマを検討する会議で「行政から容積ボーナス以外のインセンティブがないかと相談を受ける時代になっている。新しい街づくりの評価指標が必要なのではないか?」という意見が提示され、これに多くのメンバーが共感する場面がありました。
東京をニューヨークやロンドンに負けないグローバルな競争力を持った都市にしようという視点は分かりやすいと思います。その点で森記念財団が発表する「世界の都市総合力ランキング」は話題になりますし、東京がパリを抜いて3位に躍進すると自尊心がくすぐられるのも事実です。ただ東京全体を対象にするこの評価指標では、地方自治体の努力目標にはなっても、ディベロッパーを中心に街づくりに関係する私たち民間企業にとっては、範囲が広すぎるためコミットのしようが無いというのが実感です。
それに加えて都市の競争力として[経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセス]の6分野で評価する視点も、成長社会志向が顕著で日本のような成熟社会の肌感とのズレを感じるという意見もありました。その点では安心・快適・環境を重視する「Liveable Well Being City調査」の方が親和性が高いと考えます。
またリクルート住まいカンパニーが発表する「住みたい街ランキング」も毎年話題になります。こちらは駅を中心にした街を対象にして親しみやすい範囲なのですが、「あなたが今後住んでみたいと思う街(駅)は?」という漠然としたアンケートの集計結果のため、改善方策が不明確でやはりコミットのしようがないと言われます。
一方で近年の都市開発では都市再生特区の趣旨を反映してエリアマネジメント組織(以下エリマネ)を設立し、ソフトな街づくり活動を試みる事が通例になっています。ただ現状では効果も測定できず収益にもつながらないため、次第に活動原資が減らされ継続性に乏しい事例が多い状況です。エリマネ活動などソフトな街づくりの効果が反映できる評価指標の必要性を痛感します。
街単位で、成熟社会に対応して、ソフトを含めて評価され、改善方策が明確な、私たち民間の街づくり推進者がコミットできる評価指標が必要なのです。
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