第1章 今なぜ「参加デザイン」が必要なのか:参加デザイン論①
【内容】
1.集客の時代が変わった
2.「集める」だけでは続かない
3.これからは「参加」を設計する時代へ
1.集客の時代が変わった
「どうすれば、もっと多くのお客様に来てもらえるだろうか。」
これは、商業施設や文化施設、スポーツ施設、観光地など、多くの集客施設が長年考え続けてきたテーマです。
これまでは、新しいイベントを開催したり、有名人を呼んだり、広告を増やしたりすることで集客を図ってきました。そして、多くのお客様が来場すれば、そのイベントは成功だと評価されてきました。
しかし、近年、この成功法則が少しずつ通用しなくなっています。
その理由は、人が減ったからだけではありません。
人口減少や少子高齢化に加え、動画配信サービスやSNS、ゲーム、推し活など、人々の楽しみ方が多様になりました。
私たちは以前よりも多くの選択肢を持つようになり、「今日はどこへ行こうか」だけでなく、「今日は何に時間を使おうか」を選ぶ時代になっています。
つまり、集客施設が競争している相手は、もはや隣の施設ではありません。
人々の限られた「時間」と「関心」を巡る競争になっているのです。
だからこそ、一度だけ来てもらうことよりも、「また行きたい」「少し関わってみたい」と思ってもらうことが重要になっています。
集客ビジネスは今、大きな転換点を迎えています。
2.「集める」だけでは続かない
例えば、人気アーティストのコンサートが開催されれば、多くの人が集まります。
しかし、公演が終われば、人は帰宅し、翌日には街はいつもの姿に戻ります。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
しかし、それだけでは地域との関係は深まりません。
一方で近年は、少し違う考え方が生まれています。
スタジアムでは試合を観戦しなくても周辺で食事やイベントを楽しめるようになり、劇場では開演前から街全体で作品の世界観を体験できるような演出が増えています。
つまり、「参加する」「参加しない」という二択ではなく、
少し立ち寄る。
雰囲気を楽しむ。
体験してみる。
応援する。
やがて主体的に関わる。
というように、人との関係を段階的に深めていく設計が始まっています。
これまで集客ビジネスは、「何人来たか」を重視してきました。
しかしこれからは、「どれだけ深く関わってもらえたか」が競争力になります。
来場者ではなく、参加者を育てることが重要になってきたのです。
3.これからは「参加」を設計する時代へ
私は、この変化を「参加デザイン」という言葉で整理したいと思います。
参加デザインとは、イベントを設計することではありません。
人と場との関係が、一度きりで終わるのではなく、少しずつ深まり、やがて主体的な参加や共創へと発展していくプロセスを設計することです。
この考え方は、スポーツだけに当てはまるものではありません。
文化施設、商業施設、美術館、ホテル、オフィス、さらには街づくりにも共通しています。
これまでの集客ビジネスは、「人を集めること」が目的でした。
しかし、これから求められるのは、「人との関係を育てること」です。
そのためには、参加する・しないという二元的な発想ではなく、「どのように参加が深まっていくか」というグラデーションを設計することが重要になります。
本シリーズでは、この新しい考え方を「参加デザイン」と名付け、その基本原理と実践方法を、スポーツ、文化、商業、そして街づくりのさまざまな事例を通じて整理していきます。
参加を設計することは、単にイベントを成功させるためではありません。
人と人、人と場、人と地域との関係を育み、新しい価値を生み出すための設計思想です。
これからの時代に求められる集客とは、「どれだけ多く集めるか」ではなく、「どれだけ豊かな参加を育てられるか」。
そこから、本シリーズの議論を始めていきたいと思います。

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