top of page
検索

街づくりの「タブー」だった神社仏閣:社寺再考 ③

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2022年11月25日
  • 読了時間: 2分

これまでの街づくりと社寺仏閣との関係を整理し、これからのあり方について、検討します。

【内容】

  1. 今昔の街づくりでの位置付け

  2. 都市における社寺の可能性

  3. シビックプライドの拠点としての社寺整備



1.今昔の街づくりでの位置付け

江戸時代までの社寺は、街づくりにおいて、大変重要な位置を占めていました。

門前町では、神社や寺院を中心に街が形成され、城下町でも、武家地、町人地、寺社地などに町割りされて計画していたのです。

ところが戦後以降は、「政教分離」の観点から、街づくりにおける「タブー」として、社寺との関わりは希薄になります。著名な社寺が存在しない地域では、社寺の敷地に「触れない」ように注意するだけで、その存在に配慮しないコンセプトで、市街地整備が計画されてきました。

道路の整備や再開発などの都市計画において、社寺の存在や意義を認識し、積極的に活用することはなかったのです。


2.都市における社寺の可能性

都市内の社寺は、庭園や境内などが貴重なオープンスペースであり、災害時には地域の人々にとって安全で安心な場所になります。さらに社寺の様々な施設は、文化財に指定されている事も多く、地域の歴史、美しい景観など歴史的・文化的な価値の高い拠点とも言えます。またソフト的な視点から見ると、社寺は葬祭や布教の場として、宗教的・心理的な存在であると同時に、寺子屋が開設されたり、地域の相談所などの役目を担う、地域コミュニティーの核として存在してきました。

また近年は、若い女性による「御朱印集め」やパワースポット巡りや、外国人観光客にとっては、日本らしいシンボル施設として、注目を浴びています。

このように都市における社寺は、公共的、文化的、観光的な観点から、非常に重要なポテンシャルを秘めていると言えます。


3.シビックプライドとしての社寺整備

政教分離のしがらみの中で、行政が特定の宗教や社寺を「援助していないこと」を、証明することは難しく、行政サイドからの積極的なアプローチは期待できません

社寺の整備には、個々の社寺が自ら持っている資産と可能性を、再調査して洗い直すことから、行動を起こす必要があります。

その上で、社寺と生活者との距離を、縮める取り組みが有効です。商店会や企業などと連携し、市民自らの施策として、機運を盛り上げていくのです。

社寺が存在する地域において、街づくりの観点で担うべき役割をしっかり抑え、人的連携を通じて、シビックプライドの拠点として位置付け、行政が進める様々な街づくり施策とパッケージ化していくことが重要といえます。

 
 
 

最新記事

すべて表示
共体験研究の変遷 共体験デザイン ③

【内容】 第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 第2章 共体験の社会的接合と都市研究への展開 第3章 共体験の測定・検証と都市開発への統合   第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 都市開発における「共体験」の研究は、1960年代から80年代にかけて、公共空間における人々の行動観察から始まりました。 ウィリアム・ホワイトの『The Social Life of Small Urban Spaces

 
 
 
共体験の定義 共体験デザイン ②

【内容】 第1章 「共体験」とは何か 第2章 都市開発における共体験の広がり 第3章 都市開発での実践方法   第1章 「共体験」とは何か 「共体験(Co-experience)」とは、複数の人が同じ時間や場所で体験を分かち合い、その中で互いに感情や意味を育てていくことを指します。 例えば、一人で食事をするのと、友人や家族と一緒に食事をするのとでは、同じ料理でも感じ方が違います。 それは、周りの人

 
 
 
今なぜ 共体験なのか? 共体験デザイン ①

【内容】 第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 第2章 経済的・技術的背景からみる共体験デザインの価値 第3章 多様性・実務性を踏まえた都市開発の新たなインフラ     第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 現代の都市は、人の数こそ多いものの、匿名性が強まり個人は孤立しがちです。 都市生活者の多くは、道を行き交う群衆の中で互いに接触することなく、ただ通過していく日常を過ごしてい

 
 
 

コメント


bottom of page