第2章 従来型集客ビジネスの限界 参加デザイン②
【内容】
1.イベントは成功した。しかし、その後が続かない
2.「来場者数」だけでは、本当の価値は測れない
3.施設を競う時代から、関係性を育てる時代へ
1.イベントは成功した。しかし、その後が続かない
「大勢のお客様に来場していただき、大盛況のうちに終了しました。」
イベント終了後、このような報告を耳にすることは少なくありません。
確かに、多くの来場者が集まり、会場が賑わえば、そのイベント自体は成功だったと言えるでしょう。しかし、その賑わいは翌日も続いているでしょうか。その施設を再び訪れたいと思う人はどれだけいるでしょうか。そして、その街との新しい関係は生まれたでしょうか。
従来の集客ビジネスは、「一度来てもらうこと」を目標として発展してきました。
広告を出し、魅力的なイベントを企画し、来場者数を増やすことが成果として評価されてきたのです。
この考え方は、高度経済成長期や人口が増加していた時代には、とても合理的でした。新しい施設やイベントが次々に生まれ、多くの人が「初めて体験すること」に価値を感じていたからです。
しかし現在では、イベントが終わると人の流れも止まり、施設の日常は以前と変わらないというケースが少なくありません。
イベントは成功したのに、地域や施設の未来は変わらない。
ここに、従来型集客ビジネスの最初の限界があります。
2.「来場者数」だけでは、本当の価値は測れない
従来の集客では、「何人来たか」が最も重要な指標でした。
来場者数、売上、チケット販売枚数など、分かりやすい数字で成果を評価してきました。
もちろん、これらは今でも重要な経営指標です。
しかし、それだけでは見えない価値が増えてきています。
例えば、イベントには参加しなかったものの、会場周辺で食事を楽しんだ人。
展示だけを見て帰った人。SNSでイベントを知り、次回は参加したいと思った人。
あるいは、イベントをきっかけにボランティアや地域活動へ参加するようになった人。
こうした人たちは、従来の指標では十分に評価されません。
しかし実際には、施設や地域との関係を少しずつ深めている存在です。
つまり、「来場したかどうか」という二元的な見方ではなく、「どのように関わったか」という視点が必要になっています。
参加には、さまざまな段階があります。
少し立ち寄ることも参加です。
応援することも参加です。
SNSで発信することも参加です。
地域活動へ加わることも参加です。
これらを一つの連続したプロセスとして捉えることが、これからの集客ビジネスには求められています。
3.施設を競う時代から、関係性を育てる時代へ
もう一つ、大きな変化があります。
それは、競争の単位が変わったことです。
以前は、「どちらの施設が魅力的か」という競争でした。
より立派な建物、より豪華な設備、より有名な出演者が競争力になっていました。
しかし現在では、人々は一つの施設だけを目的に行動しているわけではありません。
駅前を歩き、広場でイベントを楽しみ、カフェで過ごし、買い物をして帰る。
あるいは、スポーツ観戦の前後に街を散策し、写真を撮り、仲間と語り合う。
人々が楽しんでいるのは、施設ではなく、その一日全体の体験です。
つまり、競争しているのは建物ではなく、「どれだけ豊かな時間を過ごせるか」という体験全体なのです。
だからこそ、施設の中だけを考える時代は終わりつつあります。
街や周辺施設、人々の活動まで含めて設計しなければ、本当の魅力は生まれません。
従来型集客ビジネスは、「人を集める」ことには大きな成果を上げてきました。
しかし、これから求められるのは、「人との関係を育てる」ことです。
イベントの成功をゴールとするのではなく、その体験をきっかけに人と場との関係が少しずつ深まり、やがて新しい活動や共創へと発展していくこと。
そのような発想への転換が、これからの集客ビジネスには求められています。
次章では、このような社会の変化の中で、集客ビジネスそのものがどのように進化してきたのかを振り返り、「参加デザイン」が生まれる必然性を整理していきます。

コメント